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吾輩はエビチリ天使である 三話

 「唐揚げ全部抜きはひどいよねー」 こまりちゃんはまだ晩ご飯で唐揚げを全部抜かれたことを言っている。まったくしつこいな。しかもこまりちゃんがあんなに声をあげるから悪いんだ。 「にゃー」 もういいじゃないか。諦めろこまりちゃん。 『こちらが一番人気の唐揚げです』 テレビからそんな声が聞こえてきた。げえ、唐揚げか... 「テレビまで唐揚げなんていじめだよ...。あああああ、唐揚げ!!」 もうこまりちゃんうるさいよ! 「フーーーッ」 思わず、威嚇の声を出してしまった。 「あああ、エビチリ天使ごめんね? 怒った?」 わかればいいんだ。 「うーん、次は親に使ってみるか...」 何を言ってるんだ? こまり
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吾輩はエビチリ天使である 二話

  「ねー、エビチリ天使。私は何も食べてないよねー?」 ただいまこまりちゃんがつまみ食いをした容疑でお母さんから事情徴収を受けている。 私はこまりちゃんが唐揚げを一つつまみ食いしたのを見たのだ。こまりちゃんもそのことはわかっているのに、私が人の言葉を使えないのをいいことに何かと同意を求めてくる。 「ねー、エビチリ天使。こないだエビチリ天使がご飯つまみ食いしてたの知ってたんだけどなぁー」 こまりちゃんはこそっと耳打ちしてくる。卑怯な奴だ。こまりちゃんは。 仕方がない。こまりちゃんの無実を訴えておこうと思う。 「にゃー、にゃーにゃー」 「ほら! エビチリ天使だって食べてないって言ってるよ
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吾輩はエビチリ天使である 一話

  吾輩はエビチリ天使である。  名前は大好きなこまりちゃんが付けてくれた。  いつも優しいこまりちゃん。しかし、こまりちゃんにはある秘密があったのだ...!!  私はこまりちゃんに拾われた。  あの日はひどく寒い日だった。  いつもは食べ物を探して歩き回っているが、あの日はそんなどころではないほど、寒く動くことも憚られた。  一日ぐらい食べなくても死にはしないが、寒さでどんどん体力が奪われていった。  寝ようかと目をつぶろうとした時にこまりちゃんは現れた。  「にゃー、ねこちゃん生きてるかー?」  えらく失礼なことを言われ、私は腹立ちながら顔を上げた。  10代後半ほどの人間のメスだった。顔
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