吾輩はエビチリ天使である 二話
「ねー、エビチリ天使。私は何も食べてないよねー?」
ただいまこまりちゃんがつまみ食いをした容疑でお母さんから事情徴収を受けている。
私はこまりちゃんが唐揚げを一つつまみ食いしたのを見たのだ。こまりちゃんもそのことはわかっているのに、私が人の言葉を使えないのをいいことに何かと同意を求めてくる。
「ねー、エビチリ天使。こないだエビチリ天使がご飯つまみ食いしてたの知ってたんだけどなぁー」
こまりちゃんはこそっと耳打ちしてくる。卑怯な奴だ。こまりちゃんは。
仕方がない。こまりちゃんの無実を訴えておこうと思う。
「にゃー、にゃーにゃー」
「ほら! エビチリ天使だって食べてないって言ってるよ!!」
本当にこまりちゃんは私をいいように使う。
「いやいや、つまみ食いしたって言ってるのよ」
みんなして私を良いように使いまくる。
「にゃー、にゃー」
とりあえず、こまりちゃんはつまみ食いしてませんよっと。実はしたけど。
「もう、本当につまみ食いなんてしてません!!」
あ、こまりちゃん口を閉じろ。歯に...
「こまり、歯に衣付いてるわよ」
あー、バレた。残念。こまりちゃんはだいたいこういうところが甘い。
「ふぉえっ!? そ、それはみみゃちが...見間違えじゃないかなー」
こまりちゃんは焦って噛みまくってるじゃないか。もう無理だ。こまりちゃん諦めろ。
「はい、こまり唐揚げつまみ食いしたわね。唐揚げ一個抜き!」
こまりちゃんは唐揚げが大好きだ。一個減らされたらかなり怒る。
「そんなの、無理!! 唐揚げだけはお願い!!」
こまりちゃんはつまみ食いしているのだから仕方がない。
「とりあえず、諦めること!」
こまりちゃんは一瞬後ろを向いた。おい、どうした。大丈夫か。
「ぷぎゃああああああ」
振り向いたこまりちゃんは本当に泣きそうなので、可哀想になってきた。仕方がないからこまりちゃんのもとに行き手をぺろぺろと舐めた。
「エビチリ天使ぃ...。唐揚げぇ...」
うわわ...こまりちゃん目に涙たまってるよ。大丈夫か。
「にゃー」
少し小声で鳴いてみる。
「うわああああああ、唐揚げえええええ」
もう、本当にどうしようもない子だ。仕方がない。ちょっと待ったとけこまりちゃん。
後ろを見て確認する。よし、今ならお母さんはいない。多分トイレにでも行った。
ススッと台所まで走り、唐揚げが置いてある机にピョンッと跳び乗る。ふう、唐揚げ唐揚げっと。私は唐揚げをひとつつまみあげると、机から飛び下りこまりちゃんの元へ走った。
「にゃー」
ほれ唐揚げだぞ、こまりちゃん仕方がないから持って来たぞ。
「うおおおおお、エビチリ天使ありがとう!!」
馬鹿、こまりちゃんそんな大声を出したら...
「こまりぃ。何してるの?」
ほら、お母さんが来たじゃないか。
「あ、これはさ、エビチリ天使が...」
「そんな言い訳はいいから!」
もう知ーらない。
私はふいっと向こうへ走る。
こまりちゃんはその後唐揚げを全て抜かれたのであった...。
しかし、それ以上にこまりちゃんは最低なことをしたということを私はこの後に知ったのだ―――――